「捕虜」と「俘虜」

このサイトでは「俘虜(ふりょ)」というあまり聞き慣れないことばが多く使われています。この意味は「捕虜(ほりょ)」と全く同じだと思って下さい。 ではなぜ「捕虜」を使っていないかというと、歴史的な事情をふまえているのです。このサイトで扱われている捕虜は第一次世界大戦時、青島(チンタオ)で日本と戦って敗れ、日本各地に収容されたドイツ兵士(および一部オーストリア・ハンガリー帝国兵士)なのですが、第二次世界大戦まで日本陸軍では俘虜と呼んでいました。私たち研究者が閲覧する公文書では、ほとんどの場合「俘虜」が使われ、「捕虜」は少数例です。それに従って私たちはどうしても「俘虜」の方がなじんでいるというのが理由と言えば理由になります。
では、当時「捕虜」があまり使われなかったかというと、そうでもありません。当時の新聞や雑誌、書籍などでよく見かけます。たとえば、「板東俘虜収容所」でのベートーヴェン交響曲第九番の日本初演のことを太平洋戦争中に出版したエッセーに書いた徳川頼貞は「捕虜」と言っています。